オーバーヒートとは、エンジンの発する熱量が、車の冷却性能を上回った場合に発生するエンジントラブルのことです。
オーバーヒートは突然起こるため、慣れていないドライバーの場合、どうしたらいいかと焦ってしまうケースも多いでしょう。
オーバーヒートによる故障や事故のリスクを最小限にするためには、早めに適切な対処を取ることが欠かせません。
そこで当記事では、オーバーヒートの際に必要な修理や修理すべき場所、取るべき対処法、起こる症状などについて解説していきます。
現在車がオーバーヒートを起こして困っている方だけでなく、今後オーバーヒートが起きてしまった時に落ち着いて対応するためにも役立つ内容です。
ぜひお読みください。
車がオーバーヒートしたときにとるべき対処法5ステップ
車がオーバーヒートするシーンはあまり多くないため、突然オーバーヒートするとどうしたらよいかわからず焦ってしまうドライバーの方も多いでしょう。
焦った結果判断を誤ると、さらなる大きな事故を引き起こしたり、ドライバー自身が怪我を負ったりするリスクもあります。
オーバーヒートした際の正しい対処法をあらかじめ知っておけば、いざという時焦らず冷静に対応できる可能性が高まります。
車がオーバーヒートしてしまった際は、以下の5ステップに従って行動するようにしてください。
- 安全な場所に停車する
- アイドリング状態で水温を確認する
- エンジンを止め、ボンネットを開ける
- 十分に時間をかけて車を冷やし、様子を見る
- 症状が酷い、回復しない場合はロードサービスなどを依頼する
以下からは、それぞれの対処法について詳しく見ていきます。
①安全な場所に停車する
まずは落ち着いて、他の車の走行を邪魔しない安全な場所に車を止める必要があります。
オーバーヒートを起こした状態で車を走らせ続けると、車がどんどんダメージを負ってしまいます。
また、突然走れなくなって止まってしまい、大きな事故を引き起こす可能性もあります。
さらに、無理に走行させ続けたことでエンジンが故障してしまうリスクも考えられます。
車がオーバーヒートしたら、道路の脇や十分な幅が設けられた路肩などに停車させましょう。
高速道路の場合は、待機所に車を停車させてください。
②アイドリング状態で水温を確認する
アイドリング状態で水温がどうなっているかを確認しましょう。
水温の状態は、メーターパネルにある水温計で確認できます。
Hを超えていない場合、冷却システムがまだ完全にダウンしていない可能性があります。
ダウンしていない場合は一旦エンジンをかけ、アイドリング状態にして水温が低下するかをチェックしてみてください。
水温が下がらなかった場合は、再びエンジンを切りましょう。
もし水温が下がった場合は、そのまま走り続けてもOKです。
ただし、走行できるからといって完全に直ったわけではありません。
あくまでも「末期の状態にはなっていない」というだけに過ぎないため、その後すぐに整備工場などで点検を行うようにしてください。
③エンジンを止め、ボンネットを開ける
冷却ファンが回っていなかったり冷却水が漏れていたりする場合は、すぐにエンジンを停止させてボンネットを開きましょう。
ボンネットを開くことで、エンジンルームに風が通り、エンジンが冷えやすくなります。
なお、冷却ファンが回っていて冷却水も漏れていない場合は、すぐにエンジンを止めないことをおすすめします。
エンジンを止めると、エンジンオイルの循環が止まり、エンジンが焼き付く可能性があるためです。
エンジンが高温になっている場合、火傷の恐れがあるため、ボンネットを開く際は十分に注意しましょう。
特にボンネットから煙や蒸気が出ている場合は、熱い空気に触れることとなるため慎重に開くようにしてください。
④十分に時間をかけて車を冷やし、様子を見る
オーバーヒートになると、エンジンはもちろんラジエーターや冷却水が通るホースも熱くなってしまいます。
一度熱くなったエンジンやホースを冷やすのは簡単ではないため、十分に時間をかけて車を冷やすようにしてください。
また、このタイミングでエンジンルーム内のラジエーターや冷却水の状態もチェックするようにしてください。
ラジエーターから液が噴き出ていないか、冷却水が空になっていないかを確認しましょう。
もし冷却水が不足している場合、冷却水を補充することで解決する可能性もあります。
ただし、冷却水を入れる際には注意が必要です。
冷却水を補充する場合、キャップを外す必要があります。
エンジンを止めたばかりの状態でラジエーターのキャップやリザーバータンク(ラジエーターが高温になってしまった時に、膨張した冷却水の逃げ道となる補助用のタンクのこと)を外すと、中から100℃以上の冷却水が噴き出てきて、火傷する可能性があります。
車に詳しくない場合は自分で冷却水を補充しようとせず、プロの力を借りるようにしましょう。
⑤症状が酷い、回復しない場合はロードサービスなどを依頼する
オーバーヒートが末期となってしまった場合、車を冷やしてもなかなか回復しないケースがあります。
回復させるのが難しそうだと感じた場合は、ロードサービスを依頼するようにしてください。
ロードサービスに頼ることで、プロによる安心感の高い処置を受けることができます。
ロードサービスを呼んで応急処置やレッカーなどの対応を行ってもらった後に、修理工場でオーバーヒートの原因調査と修理をしっかりと行ってもらいましょう。
オーバーヒートの際に必要な修理8つ
車のオーバーヒートは、さまざまなパーツの不具合や故障が原因となって引き起こされます。
オーバーヒートを修理する場合、原因となったパーツの修理や交換が必要となります。
修理にかかる費用は、パーツによっても大きく異なります。以下で紹介していきます。
オーバーヒートした時の修理費用の目安表
オーバーヒートの原因となるパーツの修理・交換を行った際の修理代の目安は、以下のとおりです。
冷却水の補充:1,000〜3,000円
ラジエーターの交換:20,000〜80,000円
ラジエーターホースの交換:10,000〜20,000円
ラジエーター部品の交換:20,000〜50,000円
ウォーターポンプの交換:60,000〜70,000円
サーモスタットの交換:6,000〜15,000円
冷却用電動ファンの交換:20,000〜100,000円
エンジンオイルの交換:1,000〜4,000円
冷却水やエンジンオイルのように中身を交換・補充するだけであれば、1,000円台で済むケースがほとんどです。
しかしパーツそのものを交換する必要がある場合は、10,000円を超えてしまうケースも少なくありません。
特にラジエーターやウォーターポンプのような規模の大きな部品については、70,000円以上かかるケースもあるため注意が必要です。
またウォーターポンプなどのパーツは、長い間走行していくとどんどん劣化していきます。
パーツが劣化すると、再びオーバーヒートを引き起こす可能性もあります。
経年劣化によるオーバーヒートを防ぐためにも、パーツごとの交換時期についてはしっかりと把握しておき、時期が迫ったらきちんと交換を行うようにしましょう。
「パーツごとの故障が頻繁に起こり、その都度オーバーヒートが起きている」といったような状況にある場合は、車の買い替えを行うのもひとつの手です。
オーバーヒートが起こった際に修理すべき箇所
車がオーバーヒートを起こした場合、修理する必要が出てくるのは主に以下のような箇所です。
- 冷却水
- サーモスタット
- ラジエーター
- ウォーターポンプ
- 冷却用電動ファン
- 潤滑システム
- その他のコンピューター
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
冷却システムの不調が疑われる場合
オーバーヒートが起こる原因のひとつとして、冷却システムの不調が考えられます。
冷却システムと一口に言っても、システムはさまざまなパーツからできています。
パーツごとの詳細については、以下の通りです。
冷却水
冷却水が不足することで、オーバーヒートが起こっている可能性があります。暑い時期は冷却水が蒸発しやすいため、特に注意が必要です。
単に冷却水が足りていないというだけであれば、補充することでオーバーヒート状態から回復できる可能性があります。
冷却水が不足している場合、応急処置として水道水を入れることでも対処できます。
冷却水が原因となっているオーバーヒートの中には、ただ単に冷却水が不足しているのではなく、ウォーターポンプやラジエーターホースが壊れていることが原因で冷却水が足りなくなっているケースもあります。
故障が起きている場合は、故障している場所を修理する必要が出てきます。
サーモスタット
サーモスタットとは、冷却水を適切な温度にキープする装置のことです。
サーモスタットが悪くなると、バルブの開閉がうまくいかず、温度が高くなってしまいます。
サーモスタットの不具合が原因である場合は、交換を行うようにしましょう。
交換にかかる費用は、新品で10,000円ほどです。
ラジエーター
ラジエーターとは、エンジンを冷やす役割を持っている装置のことです。
ラジエーター本体やホース、キャップに破損や劣化がある場合、オーバーヒートを引き起こす原因となり得ます。
また、ラジエーターにビニールや雪が覆いかぶさって塞いでしまうことでもオーバーヒートが発生することがあります。
何かがラジエーターを塞いでしまっていないか、一度確認してみるようにしましょう。
ウォーターポンプ
ウォーターポンプとは、冷却水を循環させるために必要なポンプのことです。
ウォーターポンプが劣化したり錆びたりすると、不具合を引き起こす可能性があります。
ウォーターポンプを交換する場合、大規模な作業が必要となることも少なくありません。
冷却用電動ファン
冷却用電動ファンとは、長い時間の低速走行や渋滞の場面でエンジンを冷却する装置のことです。
渋滞などの場面ではラジエーターが十分に動作しにくいため、ラジエーターに代わってこの装置が活躍してくれます。
冷却用電動ファンが故障することでも、オーバーヒートが起こるケースがあります。
ファンの故障が原因となっている場合は、交換する形で対応を行います。
それ以外の原因が疑われる場合
冷却システムの故障以外に考えられる原因のひとつは、潤滑システムの故障です。
潤滑システムとは、エンジンが回転している部分などに潤滑オイルを供給することで、摩擦を弱め、金属パーツを円滑に動かすシステムのことです。
エンジンオイルが悪くなると、サビが発生したり焼き付きや摩擦が増えたりすることで、エンジンの冷却を阻害することがあります。
劣化したエンジンオイルによってオーバーヒートを引き起こさないようにするためにも、オイルは定期的に交換するようにしましょう。
他には、水温計などのコンピューターが不具合を引き起こしている可能性もあります。
オーバーヒートはさまざまな原因によって引き起こされるため、自分一人で原因を発見・解決するのは困難だと言えます。
無理に直そうとするとさらなる故障や事故につながるケースもあるため、最低限の対処法だけ試したら、すぐにロードサービスなどでの救援を呼ぶようにしましょう。
主なロードサービスの連絡先は、以下の通りです。
救援を呼ぶ際には、ぜひ参考にしてください。
※ロードサービスの利用には、保険の加入が必要になります。
- チューリッヒ 0120-860-001
- ソニー損保 0120-101-789
- 三井ダイレクト損保 0120-638-312
- アクサ損害保険 0120-699-644
- SBI損害保険 0800-2222-581
- そんぽ24 0120-00-2446
進行度別オーバーヒートになったときにおこる症状
車がオーバーヒートを引き起こした場合、水温計やボンネットなどさまざまな部分に不調のサインが現れます。
オーバーヒートは、できる限り初期の段階で気づくことが重要です。
早めに発見すればオーバーヒートによる事故を防げる確率が上がる上、故障の度合いも少なく済む可能性が高まります。
手遅れになる前に発見するためにも、オーバーヒートになった際に起こる症状をしっかりと知っておく事をおすすめします。
以下からは、オーバーヒートになった際に車に現れる症状を、初期症状・中期症状・末期症状の3段階に分けて解説していきます。
オーバーヒートの初期症状
初期症状の段階で車のオーバーヒートに気づくことができれば、車への大きなダメージを防げる可能性もあります。
オーバーヒートの初期症状としては、以下のようなものが挙げられます。
水温計がH付近になる
メーターパネルのタコメーターのあたりには、エンジンの中を流れる冷却水の温度を示す水温計が取り付けられています。
異常がない場合、水温計の針はCとHのちょうど間あたりを指しています。
なお車の種類によっては、針ではなく数値で温度が示されているものもあります。
数値で表示されている場合は、115℃をオーバーヒートの目安にしてください。
115℃よりも高くなっている場合は、オーバーヒートになっている可能性があります。
スピードが出にくくなる
オーバーヒートになると、アクセルを踏んでもなかなかスピードが上がらなくなります。
普段に比べてスピードが出ないという感覚を覚えた場合は注意しましょう。
エンジンの回転数が不安定になる
通常時のエンジンは回転数が安定していますが、オーバーヒートになっていると、アイドリング中のエンジンの回転が安定しにくくなります。
アクセルを踏んだ際に異音が聞こえる
アクセルを踏んだ際、「ノッキング音」と呼ばれる聞きなれない異音が聞こえた場合はオーバーヒートを起こしている可能性があります。
初期症状の場合、「カリカリ」という音が聞こえてきます。
エンジンルームから甘い匂いが漂ってくる
エンジンルームから甘い匂いがした場合、冷却水が漏れ出ている可能性があります。
走行中の車のエンジンは、900℃を超えることもあります。
そんなエンジンを冷やすことで、オーバーヒートを防いでくれているのが冷却水です。
冷却水が漏れているということは、車がオーバーヒートを起こしているという証拠です。
冷却水は甘い匂いがするため、ジュースのような甘い匂いを感じた際はオーバーヒートを疑うようにしましょう。
オーバーヒートの中期症状
オーバーヒートが中期になると、初期の時よりもさらにわかりやすい症状が出てきます。
これ以上車に大きなダメージを与えないようにするためにも、この時点で何らかの対策を取るようにしましょう。
水温計がHを振り切る
水温計の針がHを超えて振り切った場合は、中期のオーバーヒートとなっている可能性があります。
水温計が搭載されていない車の場合は、水温警告灯を確認してみてください。
水温警告灯が点滅または点灯している場合、オーバーヒートを引き起こしている可能性があります。
アイドリングができず、アクセルを踏まないと止まる
中期になると、アイドリングを保つことができず、アクセルを踏まないとエンジンが停止してしまう状態となります。
エンジンルームから水蒸気が出てくる
ボンネットの隙間から煙のような気体が出てきたら、注意が必要です。
煙の正体は、冷却水でできた水蒸気です。
ボンネットから水蒸気が出てきているということは、冷却水が沸騰して気化しているという証拠です。
エンジンは冷却水が沸騰するほどの高温になっているため、大きく症状が進んでいる状態だといえます。
オーバーヒートの末期症状
オーバーヒートが末期状態まで来てしまうと、以下のような症状が出てきます。
焼け焦げたような匂いが漂ってくる
ボンネットの辺りから、オイルが焼け焦げたような匂いがしてきます。
水温計がCを指す
末期になると、水温計がCを指すことがあります。
Cになっている場合、冷却水が漏れ出たことで不足している状態となっていることを指します。
エンジンから聞きなれないノッキング音が聞こえる
エンジンから、初期症状の時とは異なるノッキング音が聞こえるようになります。
具体的には、「カンカン」「カタカタ」「キンキン」という音が聞こえます。
エンジンがかからなくなる
オーバーヒートになると、エンジンをかけようとしてもかからなくなってしまうことがあります。
ボンネットから煙が出てくる
冷却水が漏れたり不足したりすることで、エンジンがオーバーヒートを起こし、煙が出てくるようになります。
映画などでも、オーバーヒートした車が煙を上げている描写を見たことがあるのではないでしょうか。
ここからもわかる通り、ボンネットから煙が出てくるというのは、オーバーヒートの代表的な症状のひとつです。
末期の段階まで来た場合、オーバーヒートを起こした部品が故障するだけでなく、エンジンそのものが焼き付いて故障する可能性もあります。
エンジンは修理に多額の費用がかかるケースも多いため、できる限り初期から中期の段階で処理するのがベストです。
【最悪100万円越え!?】車のエンジン故障の際にかかる時間・費用はどのくらい?
オーバーヒートが疑われるときは落ち着いて対処を(まとめ)
最後に内容をおさらいします。
オーバーヒートを起こした際は、ひとまず車を安全な場所に停車させてください。
その後水温を確認し、ボンネットを開けてエンジンを冷やすようにしましょう。
オーバーヒートが起こると、水温計の様子やノッキング音、匂いなどのさまざまな症状が現れます。
早めに気づいて早期に対処するためにも、車に異常を感じたら、オーバーヒートを起こしていないかすぐに確認するようにしてください。