当社には、「損害車売却」のご相談だけではなく、「修復歴車の購入」に関するご相談も数多く寄せられます。
「中古車の購入を検討している時、お手頃な事故車を見つけた」
「修復歴車は購入しても大丈夫？」
といった修復歴車を購入する際の皆さまの疑問を解消するため、修復歴車の特徴や注意点をご紹介いたします。
小池 一敏
事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。 幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、 車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。 ...続きを読む
そもそも修復歴車とは？
「修復歴車」とは、事故や自然災害によって車を構造する部位が損傷した経歴をもつ車のことを指します。
一般的に聞く「事故歴」や「修理歴」との違いは下記の通りです。
- 「事故歴」事故や災害に巻き込まれた経歴。告知義務はない。
- 「修理歴」車の骨格以外の部分を修理した経歴。告知義務はない。
- 「交換歴」車の部品交換を行った経歴。告知義務はない。
- 「修復歴」車の骨格部位を損傷または修理した経歴。告知義務がある。
また、自動車業界では事故によって修復歴が付いた車のことを「事故車」と呼びます。
そのため、「事故車」は単純に事故に遭ったことがある車という意味ではない可能性があることを考慮しておきましょう。
事故車の定義については、「事故車の定義とは？修復歴の判断基準と賢く高く売るコツを知ろう！」で詳しく解説しております。
車の骨格部位にあたるのは、具体的には以下のようなパーツです。
 |
|
| 名称 | 役割 |
|---|---|
| ①ダッシュパネル | エンジンルームとキャビンを仕切る
エアバックを正常に動作させる |
| ②フロントクロスメンバー | エンジンやサスペンションを支える
前部全体の構造強度を保つ |
| ③フロントインサイドパネル | 車両内部の強度を支える |
| ④フロントサイドメンバー | 全体の強度を保つ |
| ⑤ルーフパネル | 天井部分を構成 全体の強度を保つ部位 |
| ⑥ピラー | ドアとルーフ（天井部分）をつなぐ |
| ⑦トランクフロアパネル | トランクの収納場所の安定性を保つ |
| ⑧ルームフロアパネル | 床部分を構成 車両の構造的な安定性を支える |
| ⑨ラジエーターコアサポート | ラジエーターを支える部位 |
この基準は、前述の通り自動車公正取引協議会、日本自動車査定協会、日本中古車販売協会連合会によって決められたものです。
車の査定を行う際には、このような骨格部位に問題がないかをチェックされます。
ただし、修復歴の判断はボディー形状や構造（フレームつき車など）、損傷の度合いなどによって異なる場合があります。
また、上記以外の箇所を損傷した場合も事故車扱いにはなりません。
- エンジンの交換、乗せ替え
- バンパー、フロントフェンダーの交換
- ドアの交換
- ボディの全塗装、部分塗装、カスタムペイント 等
次の章では、車の骨格部位はどのような事故に遭うと損傷するのかを解説いたします。
事故のケースから見た修復歴
この章では、具体的にどこの部位を損傷すると「修復歴あり」と判断されるのかを解説いたします。
「修復歴がつくのでは？」とよく勘違いされやすい部品についてもまとめておりますので、修復歴車かどうかを判断する際の知識としてご参考にしてください。
1.正面衝突
交差点や曲道などで正面衝突を起こした場合、パーツの損傷が内部まで及んでいるかで「修復歴車」かどうかを判断します。
| 修復歴がつく場合 | |
|---|---|
| ①ダッシュパネルの修復
②フロントクロスメンバーの修復 ③フロントインサイドパネルの修復 ④フロントサイドメンバーの修復 ⑨ラジエーターコアサポートの交換 |
|
| 修復歴がつかない場合 | バンパー、フェンダー、ボンネットなど外部パーツの交換や修理
フロントガラスの交換 エンジンの載せ替え |
車の前方を構成する骨格には、以下の役割があります。
- エンジンやラジエーターなど主要部品を支える役割
- 事故の衝撃を吸収して運転手の身を守る役割
まず1つ目の主要部品を支える役割としては、上記表の②、③、⑨番が該当します。
これらの骨格が損傷した場合、駆動に重要な部品が走行の振動で位置ずれを起こしてしまい、異音の発生や故障の原因になります。
なお、⑨番のラジエーターコアサポートに関しては、交換や修理だけでは修復歴がつかない場合があります。
交換かつ隣接するフレームに曲がりや歪みなど、修理されている跡があれば「修復歴あり」となります。
2つ目の事故の衝撃を吸収して乗員の身を守る役割としては、上記表の①と④番が該当します。
壊れることを前提とした造りであるため、正面衝突を起こすとフロント部分やボンネットなどが激しく損傷します。
その際、フロントバンパーやフェンダー、ボンネットなどの外装部品のみの損傷に留まれば、交換しても修復歴はつきません。
しかし、上記にあげた内部の骨格にまで衝撃が伝わり、凹みや歪みが発生した場合は修復歴がつきます。
2.横からの衝突
車の側面を事故で損傷した場合、車の形状に影響を及ぼすかで「修復歴車」かどうかを判断します。
| 修復歴がつく場合 | |
|---|---|
| ⑥ピラーの修復
⑧フロア部分の修復 |
|
| 修復歴がつかない場合 | ドアの交換
サイドミラーの交換・修理 サイドガラスの交換 |
車の側面に突っ込まれた場合、修復歴ありに該当するのは上記の表⑥番と⑧番です。
よく勘違いされやすいのですが、ドアやサイドミラー自体は交換しても修復歴はつきません。
ドアを溶接するピラー部分が損傷を受けた場合に修復歴がつきます。
⑧番のピラーは車両全体の強度を支えているので、事故で損傷した場合は車両の耐久性が大きく損なわれます。
その上、ピラーを元の形状に戻すのは殆ど不可能に近いと言われています。
つまり、ドアの閉まりが悪い、車の天井が傾いているといった状況はピラーの損傷が伺えるでしょう。
また、⑥番の車の床部分が損傷を受けた場合は、前輪と後輪の距離が左右で非対称になるため、車の走行性能に大きな影響を及ぼします。
3.停車中の追突
停車中に後ろから追突された場合、天井やトランクスペースの形状に影響を及ぼさないかで「修復歴車」かどうかを判断します。
| 修復歴がつく場合 | |
|---|---|
| ⑤ルーフ（天井）の修復
⑦トランクフロアの交換・修復 |
|
| 修復歴がつかない場合 | バンパーの交換・修理
リアゲートの交換・修理 リアガラスの交換 |
信号待ちや渋滞などで停車中に後ろから追突された場合、⑤番のルーフ（天井）や⑦番のトランクフロア（収納スペース）が変形してしまうと修復歴がつきます。
トランクフロアは形状が複雑なため、トランクの蓋が隙間なく閉まるかどうかで板金修理が行われたかを確認できます。
リアゲート（後ろの扉）やリアバンパーが損傷する程度であれば修復歴はつきません。
ですが、トランクフロアにダメージが入っていると前述したように修復歴がついてしまうので注意が必要です。
また、意図しない後ろからの衝撃で急ハンドルや急ブレーキを操作した場合、足回りに影響を受けて走行に問題が生じる可能性があります。
こちらも修復歴はつきませんが、走行性能の低下は事故の再発につながるリスクが想定されますので大変危険です。
修復歴車の特徴｜購入時の判断方法を紹介
車を構造する部位が損傷している修復歴車は、以下のようなリスクに対する理解が必要です。
- 衝突時の安全性能の低下
- 走行性能の悪化
- 自動ブレーキ等各種センサーの誤作動
- ドアやトランクの閉まりが悪い
- メンテナンスコストの増加
車は金属の塊ですので、熱したり専用の道具で叩いたりすると、見た目は元のきれいな状態になります。
しかし、上記で上げた車の性能や機能は、低下した状態のまま元には戻りません。
また、コスト削減のため粗悪な修理が行われた場合は、内部の部品やシステムに異常が残っている可能性もあります。
そのため、修復歴車の購入は避けたほうが良いと言われています。
しかしながら、なるべく中古車の購入費用にお金をかけたくないという方もおられるでしょう。
そこで、この章では購入を控えたほうが良い修復歴車と購入してもリスクが少ない修復歴車の特徴をご紹介いたします。
購入を控えたほうがよい修復歴車
購入を控えたほうが良い車の特徴は、以下の通りです。
- 前方を損傷した車
- エアバッグが展開されたことがある車
- ピラーが変形した車
- 整備記録が不明確な車
車の前方部にある骨格には、車を動かすために欠かせない重要部品を支える役割があります。
これらの骨格が変形してしまうと、エンジン回りの部品に不具合を与える可能性が考えられます。
修理に出された際には異常が見られなくても、走行時の振動により劣化がすすみ、エンジンのオーバーヒートや異音の発生につながることもあります。
エンジン回りの部品は修理に高額な費用がかかりますので、安く購入できたとしても後々のメンテナンス費用がかさむでしょう。
そのうえ、前方部を損傷している車は、エアバッグが展開している可能性が考えられます。
また、車体全体の強度を保つ役割を持つピラーは、元の形状に戻すことが非常に難しい部位であるため、ピラーを損傷した車は安全性能が著しく低下した状態であると言えます。
この場合、再度衝突を受けた際に本来の機能通りに衝撃を吸収できず、甚大な被害が及ぶ可能性が考えられます。
以上のことから、修復歴がある車は外部と内部両方の損傷に対する修理が適切に行われているかを整備記録簿（メンテナンスノート）で確認する必要があります。
透明性のない車両はトラブルのリスクが高まりますので、整備記録簿が付属していない車はなるべく避けましょう。
事故車のデメリットについて詳しく知りたい方は、下記の関連記事をご確認ください。
事故車のデメリットを理解しよう！安全に中古車を購入するためのガイド
購入してもリスクが少ない修復歴車
購入してもリスクが少ない修復歴車は、雹により天井部分に穴やへこみができた車です。
春から秋にかけて突然降りだす雹は、直径5mm以上の大きな氷の塊であるため、車の天井やボディに大量の傷をつくります。
車の天井部分の修理は、小さなへこみでも1箇所につき5万円（板金塗装の場合）前後必要になりますので、雹の被害を受けた車は基本的に売却されます。
天井は車の骨格部位に該当するので「修復歴あり」と判断されますが、交通事故により骨格を損傷した車と違い、走行性能自体に問題はありません。
ただし、塗装が剥がれた箇所に傷がある場合は、水分や汚れが侵入して錆が発生する可能性があるので注意が必要です。
また車を正面と後方から見た際に、左右どちらかに傾いておらず、ドアやパーツ同士の隙間が左右対象である車も比較的リスクが少ないと言えるでしょう。
以上のことから修復歴車の購入で失敗しないためには、どこをどのように修理したのか情報を開示してもらい、自分の目で損傷したパーツや周囲の状態を確認することが大切です。
まとめ
「修復歴車だから買ってはダメ！」という訳ではありませんが、大きなリスクが隠れている場合がありますので、基本的には避ける方が無難でしょう。
しかしながら、なるべく低価格で中古車を手に入れたい方には、修復歴車のお値段は非常に魅力的ですよね。
修復歴車の購入を検討されている場合は、以下の点に注意して安全性能に問題がないかをきちんと確認しましょう。
- 信頼できる業者から購入する
- 第三者機関による車両診断を受ける
- 修復歴がある車の場合、何が修理されたのかを明確に確認する
購入予定である車の状態を正しく知り、粗悪に修理された修復車によるリスクを回避することが重要です。
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ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
小池 一敏
事故車買取に携わって20年以上の経験を持ち、損害車や故障車に関する知識が豊富。 幼少期からの車好きが高じて、中古車販売店や大手カー用品店、ガソリンスタンドなどに従事し、 車の知見も深い。その経験を活かし、お得な売却術や修理・乗り換え方法など車に関する幅広いコラムの監修をしている。
